WordPress の保守は、一部であれば自分で行えます。ただし、「管理画面から更新ボタンを押せるか」だけで、自力対応できる範囲を決めるのはおすすめしません。
操作そのものは簡単でも、サイトの構成や役割によって、変更したときの影響は異なります。問題が起きた場合に元へ戻せるかどうかも、作業を任せられる範囲を左右します。
僕が WordPress の保守を自分で行えるか判断するときは、主に次の3点を確認しています。
- 現在のサイトの状態を把握できるか
- 変更による影響を考えられるか
- 問題が起きたときに元へ戻せるか
この記事では具体的な更新手順ではなく、WordPress の保守をどこまで自分で担当し、どのような状態になったら一度立ち止まるかを整理します。
WordPress の保守は更新ボタンを押すことだけではない
WordPress の保守とは、ホームページを使い続けられる状態か確認し、必要に応じて更新や修正を行うことです。
主な作業には、次のようなものがあります。
- WordPress 本体・プラグイン・テーマの更新状況を確認する
- バックアップが正常に保存されているか確認する
- 公開ページや問い合わせフォームが動いているか確認する
- 管理者アカウントやセキュリティ上の問題を確認する
- サーバー、ドメイン、通信を暗号化するための SSL 証明書の契約や更新期限を確認する
- 不具合が起きたときに原因を調べ、復旧する
記事の投稿やページの編集ができていても、WordPress 全体の保守まで問題なく担当できるとは限りません。日々の情報更新を行う「運用」と、サイトの安全性や安定性を保つ「保守」は、少し分けて考えると整理しやすくなります。
以前の記事「WordPress の保守では、毎月何を確認しているのか」では、月次保守の主な確認項目をまとめました。今回は、その中から自分で行う範囲をどう決めるかに焦点を当てます。
自分でも始めやすいのは、状態を確認して記録する作業
自分で保守を始めるなら、まずは設定を変更せず、現在の状態を確認して記録する作業から始めると良いでしょう。
公開ページを確認する
トップページ、サービスページ、会社概要、アクセス情報など、重要なページを実際に開いて確認します。PC だけではなく、普段お客様が使うことの多いスマートフォンでも見ておきたいところです。
- ページが表示されるか
- 文章や画像が大きく崩れていないか
- 電話番号や予約ページへのリンクを開けるか
- 営業時間、料金、担当者などの情報が古くなっていないか
毎回すべてのページを見るのが難しければ、問い合わせや申し込みにつながるページから優先します。
問い合わせフォームの送信テストをする
フォームは画面に表示されているだけでは、正常に動いているか判断できません。テスト用と分かる内容を入力し、次のところまで確認します。
- 送信完了画面が表示される
- 管理者宛ての通知メールが届く
- 自動返信を設定している場合は、入力したメールアドレスへ届く
- メール内の文字、リンク、差出人が正しい
実際のお問い合わせと混ざらないよう、件名や氏名に「テスト」と入れておくと整理しやすくなります。
更新通知とサイトヘルスを見る
WordPress の「ダッシュボード → 更新」では、WordPress 本体・プラグイン・テーマ・翻訳データの更新通知を確認できます。
また、「ツール → サイトヘルス」では、WordPress の設定やサーバー環境について、「致命的な問題」や「おすすめの改善」として注意が必要な項目が表示されます。WordPress.org の公式ドキュメントでも、サイトヘルスはサイト構成や注意すべき項目を確認する画面として説明されています。
ただし、サイトヘルスに問題が表示されていないからといって、ホームページ全体に問題がないとは限りません。サイトヘルスは状態確認の入口として使い、公開ページや問い合わせフォームなどの重要な機能も別に確認します。
管理者アカウントと契約情報を確認する
WordPress の「ユーザー」画面を開き、現在の担当者、退職した担当者、以前の制作会社など、管理者権限を持つアカウントを確認します。
管理者は、プラグインやテーマ、ユーザー、サイト設定などへ広くアクセスできる権限です。WordPress.org の権限に関する公式ドキュメントでも、単一サイトの管理者が管理機能へアクセスできる役割として説明されています。
覚えのないアカウントを見つけても、すぐに削除しないでください。投稿の所有者になっていたり、外部サービスとの連携に使われていたりする可能性があります。まず、誰のアカウントか、現在も必要かを確認します。
あわせて、サーバー、ドメイン、有料プラグインなどの契約先、契約者、更新期限も確認しておきましょう。担当者が変わったときにログインできなくなったり、期限切れに気づかずサイトやメールが利用できなくなったりする事態を避けやすくなります。
サイトの役割と更新頻度によって、必要な確認は変わる
すべてのサイトを、同じ頻度、同じ体制で保守する必要はありません。
例えば、更新が少ない会社案内サイトでは、主要ページの表示や契約期限を定期的に確認し、変更作業の前後にバックアップを取る方法が考えられます。
ブログやお知らせを頻繁に更新するサイトでは、失っては困る記事や画像が増えるため、バックアップの間隔も調整したいところです。問い合わせ、予約、購入、会員情報などが日々増えるサイトでは、サイトの停止だけでなく、更新後に入力されたデータをどこまで失う可能性があるかも考える必要があります。
WordPress の公式バックアップガイドでも、バックアップの頻度はサイトの更新頻度や、失われた場合に許容できる内容によって変わると説明されています。
確認頻度を一律に決めるのではなく、サイトで増える情報と、停止した場合の影響から考えることが大切です。
更新するなら、問題が起きた後まで考えておく
WordPress 本体・プラグイン・テーマは、管理画面から更新できます。しかし、ボタンを押せることと、安全に更新を完了できることは別です。
WordPress.org の更新手順では、更新前にサイトをバックアップすることが案内されています。自分で更新する場合は、少なくとも次の準備をしておきたいところです。
- 更新前の表示とフォームが正常か確認する
- WordPress のファイルとデータベースをバックアップする
- バックアップの保存場所と復元方法を確認する
- 問い合わせや購入の少ない時間帯を選ぶ
- まとめて変更せず、何を更新したか記録する
- 更新後に主要ページと重要な機能を確認する
データベースとは、投稿や固定ページ、ユーザー情報、WordPress の設定などが保存される場所です。画像、テーマ、プラグインなどのファイルとは別に管理されています。そのため、一般的な WordPress サイトを完全に復元するには、ファイルとデータベースの両方が必要です。WordPress の公式バックアップガイドでも、両方をバックアップする必要があると説明されています。
バックアップファイルが保存されていても、戻し方が分からなければ、問題が起きた直後に復旧できるとは限りません。自分で復元できない場合は、サーバー会社や制作会社へ依頼できるか、連絡先と対応範囲を先に確認しておきましょう。
「状態・影響・復旧」の3点で自力対応の範囲を決める
保守作業を「初心者でもできる」「専門家でなければできない」と作業名だけで分けるのは難しいと考えています。同じプラグイン更新でも、サイトの構成や役割によって判断が変わるからです。
僕は、次の3点を実務上の判断軸にしています。
現在のサイトの状態を把握できるか
まず、何を変更しようとしているのか、その前から不具合が起きていないかを確認します。
- WordPress 本体・テーマ・プラグインに、どの程度更新が残っているか
- 現時点ですでにエラーや表示崩れが起きていないか
- どのテーマやプラグインを使っているか
- 独自テーマや個別のカスタマイズが含まれていないか
自分が変更する対象すら分からない状態では、問題が起きたときに原因を切り分けにくくなります。
変更による影響を考えられるか
次に、変更するものがサイトのどこへ影響しそうかを考えます。
例えば、問い合わせフォーム用のプラグインを更新するなら、フォームの表示だけでなく、送信、通知メール、自動返信、外部サービスとの連携なども確認対象になります。
すべての影響を正確に予測することはできません。それでも、「この変更をしたら、少なくともここは確認する」と決められる状態であれば、更新後の異常に気づきやすくなります。
サイトからの問い合わせや予約が事業上重要な場合は、技術的に操作できるかだけでなく、停止したときの影響や、復旧に使える時間まで含めて判断する必要があります。
問題が起きたときに元へ戻せるか
最後が復旧です。
「バックアップ機能が設定されているか」だけでなく、必要になったとき、そのバックアップを使ってどう戻すのかまで確認します。WordPress の公式アップグレード手順でも、データベースと WordPress のファイルをバックアップし、作成したバックアップが利用できる状態か確認するよう案内されています。
この「状態・影響・復旧」は、WordPress 公式が定めた自力対応と専門家対応の境界ではありません。公式情報を踏まえた上で、僕が保守範囲を考えるときの判断軸として整理したものです。
「自力対応・一度立ち止まる・相談」の3段階で考える
自分で行うか、専門家へ任せるかの二択にせず、次の3段階で考えると整理しやすくなります。
| 段階 | 状態の目安 | 作業例 |
|---|---|---|
| 自力対応を検討しやすい | 設定を変更せず、結果を自分で確認・記録できる | 公開ページの表示確認、フォームの送信確認、更新通知・サイトヘルス・契約期限の確認 |
| 一度立ち止まって確認したい | 変更の影響や復旧方法に分からない部分がある | 長期間滞っている更新、複数の一括更新、PHP やサーバー設定の変更、独自カスタマイズがあるサイトの更新 |
| 専門家への相談を検討したい | サイトが停止している、原因を切り分けられない、元へ戻せない | 管理画面へ入れない状態、バックアップからの復旧、ファイル・データベースの直接操作、コード修正、セキュリティ上の問題が疑われる状態 |
PHP は、WordPress をサーバー上で動かすために使われるプログラミング言語です。バージョンを変更すると、古いテーマやプラグインが動かなくなる場合があります。影響を判断できないまま、本番サイトで安易に変更するのは避けたいところです。
また、長期間更新していないからといって、更新すれば必ず問題が起きるわけではありません。ただ、複数の変更を一度に行うと、不具合が発生したときに何が影響したのかを切り分けにくくなります。
利用者に公開している本番サイトへ変更を加える前に、ステージング環境で確認する方法もあります。ステージング環境とは、本番サイトとは別に、更新や修正を試すために用意する複製環境です。予約、購入、会員、決済など、止まると影響が大きい機能がある場合は、こうした検証環境や専門家の支援を検討して良いでしょう。
すべて自分で行うか、すべて任せるかの二択ではない
WordPress の保守は、すべて自分で行うか、すべて専門家へ任せるかの二択ではありません。
例えば、次のように役割を分ける方法があります。
- 公開ページ、問い合わせフォーム、更新通知、契約期限は自社で確認する
- WordPress 本体・テーマ・プラグインの更新と、更新後の動作確認は外部へ依頼する
- 定期的な更新は自社で行い、復旧や不具合調査が必要なときだけ相談する
- 影響の小さい更新は自社で行い、予約や決済に関わる更新は事前検証を依頼する
自分で管理できる体制が整っていれば、自力対応を続ける選択肢があります。一方で、技術的には操作できても、問題が起きたときの事業への影響が大きければ、外部へ任せる方が合理的な場合もあります。
作業の難しさだけでなく、状態を把握し、影響を判断し、復旧まで担当できるかで範囲を決めることが大切です。
相談前に用意しておきたい情報
すべてを詳しく説明できなくても問題ありません。分かる範囲で、次の情報を用意すると状況を共有しやすくなります。
- ホームページの URL
- WordPress の管理画面へログインできるか
- 利用しているサーバーとドメインの契約先
- 表示された警告やエラーメッセージのスクリーンショット
- 更新通知が表示されている画面
- 最後に正常だと確認できた時期
- 直前に行った更新や設定変更
- 問い合わせ、予約、購入など、止まると困る機能
- バックアップの有無と保存場所
パスワードそのものを、最初の問い合わせに書く必要はありません。ログイン情報が必要になった場合は、依頼先と安全な共有方法を確認してから渡しましょう。
まずは現在の状態と、元へ戻せるかを確認する
WordPress の保守には、自分で対応できる範囲があります。まずは設定を変えず、現在の表示、フォーム、更新通知、アカウント、契約情報を確認するところから始められます。
更新や設定変更へ進む前には、変更の影響と復旧方法を確認します。そこで分からない部分があれば、一度立ち止まって調べるか、必要な範囲だけ外部へ相談する方法があります。
オレインデザインでは、既存の WordPress サイトについて、サイト状態の確認、WordPress 本体・テーマ・プラグインの更新、不具合調査や修正、保守・運用に関する相談に対応しています。
継続的な保守を前提にせず、まず現在の状態を整理したい場合もご相談いただけます。お問い合わせフォームからご連絡いただく際は、ホームページの URL、現在困っていること、最後に正常だった時期など、分かる範囲で情報を共有ください。
この記事が、無理なく保守を続ける範囲を考える参考になれば嬉しいです。















