生成AIを使いたい業務が見つかったとしても、次に迷うのが「どこまでAIへ任せてよいのか」ではないでしょうか。
ここで、業務全体を「AIに任せる」「人がやる」の二択にする必要はありません。
例えば、文章を作る業務でも、情報を整理する、下書きを作る、内容を確認する、最終的な表現を決める、公開するといった複数の工程があります。
AIに任せるかどうかを業務全体で決めるのではなく、工程を分け、間違ったときの影響と責任を見ながら、人が残す判断地点を決める。
この記事では、この考え方をもとに、AIと人の担当範囲を整理します。
まだ対象となる業務自体を整理できていない場合は、先に中小企業が生成AIを導入する前に、最初に整理したい業務を参考にしてください。
業務は整理できているものの、どの仕事からAIを試すか決まっていない場合は、自社のどの業務にAIを使える?活用候補を見つけて優先順位を付ける方法で候補を比較できます。
この記事では、その次の段階として、選んだ1つの業務の中でAIと人の境界を考えていきます。
業務全体ではなく、工程を分けて考える
まず、対象となる業務をいくつかの工程に分けてみます。
例えば、文章を作って公開する業務であれば、次のように分けられます。
- 必要な情報を集める
- 情報を整理する
- 下書きを作る
- 内容が正しいか確認する
- 最終的な内容を決める
- 公開・送信を承認する
- 実際に公開・送信する
この中で、すべてをAIへ任せる必要はありません。
情報の整理や下書きだけAIを使い、確認や判断は人が担当する方法もあります。反対に、AIへ渡す情報や確認方法を整理できないのであれば、その工程ではAIを使わないという判断もできます。
大切なのは、「この仕事はAI向きか」と業務名だけで決めないことです。
同じ「文章作成」でも、社内で読むメモの下書きと、顧客へ送る重要な回答では、間違ったときの影響や責任が異なります。
その違いを工程ごとに見ていきます。
AIへ任せる範囲を考える5つの判断軸
ここから使う5つの判断軸は、法律や公的機関が定めた公式の評価基準ではありません。
この記事では、自社の業務でAIと人の担当範囲を整理するための実務上の観点として使います。
誤りがあった場合の影響はどのくらいか
まず考えたいのは、その工程で間違いがあった場合に何が起こるかです。
例えば、社内用の下書きであれば、利用する前に修正できるかもしれません。
一方で、顧客への回答、採用に関する判断、契約に関する判断などでは、その結果が相手へ直接影響する場合があります。
ここで見るのは、「AIが間違えるかどうか」だけではありません。
もし結果が間違っていたとき、誰に、どの程度の影響が及ぶのかを考えます。
影響が大きい工程ほど、そのまま次の処理へ進ませるのではなく、人が判断する場所を明確にしておく方が扱いやすくなります。
後からやり直せるか
間違いが分かった後に、簡単に戻せるかどうかも確認します。
例えば、公開前の下書きなら、その場で修正できます。
一方で、すでに顧客へ送信した回答や、実行済みの判断などは、同じようには扱えません。
そのため、
- まだ下書き段階なのか
- 実行前に止められるのか
- 実行後でも簡単に訂正できるのか
- 一度実行すると影響を戻しにくいのか
という違いを見ます。
やり直しにくい工程ほど、実行する前の人の判断を厚くするという整理ができます。
誰がその判断を説明するのか
業務によっては、なぜその内容や判断になったのかを、顧客、従業員、取引先などへ説明する場面があります。
そのとき、「AIがそう出力したから」だけでは、業務上の判断理由にはなりません。
誰かが内容を確認し、その判断を採用するのであれば、どの人がその判断について説明するのかも決めておきます。
AIを使うことと、判断の責任をAIへ移すことは分けて考えます。
特に人や取引へ大きく影響する工程では、誰が最終判断を行い、その理由を説明できる状態にするのかまで整理しておきます。
AIへ渡す情報を扱ってよいか
処理内容だけでなく、AIへ何を渡すのかも確認します。
例えば、同じ要約作業でも、公開済みの文章を整理する場合と、社内だけで扱っている情報を使う場合では条件が異なります。
ここでは個別のサービスが情報をどのように扱うかを判断するのではなく、まず自社の業務として、
- 外へ出してよい情報なのか
- 慎重に扱うべき情報が含まれていないか
- AIへ渡す前に内容を減らしたり置き換えたりする必要がないか
を考えます。
AIで処理できそうだからといって、その情報をそのままAIへ渡してよいとは決めないことが重要です。
具体的なデータの扱いについて確認が必要な場合は、使用するサービスや自社のルールを別途確認したうえで判断します。
出力の正しさを確認できるか
最後に、「AIが出した内容が正しいか、何を基準に確認するのか」を考えます。
例えば、
- 元の資料と照らし合わせられる
- 必要な項目が入っているかチェックできる
- 決まった条件と比較できる
- 内容を判断できる担当者がいる
といった状態であれば、人が確認する方法を決めやすくなります。
反対に、正しいかどうかを誰も判断できない内容では、「最後に人が見る」というルールを置いても、何を確認すればよいのか分かりません。
確認の担当者を決める前に、何と照らし合わせれば正しいと判断できるのかを考えてみてください。
確認方法を作れないのであれば、その工程をAIへ任せないことも選択肢になります。
「人が確認する」を3つの役割に分ける
AIを使う業務で「最後は人が確認する」と決めることがあります。
ただ、「人が見る」だけでは、実際の役割が曖昧なままです。
必要に応じて、少なくとも次の3つに分けて考えます。
確認者
AIが出した内容を、元の情報や決められた条件と照らし合わせる人です。
例えば、
- 日付や金額が元資料と一致しているか
- 必要な項目が抜けていないか
- 意図していない内容が含まれていないか
といった点を確認します。
ここでは「この内容を採用する」という最終判断まで担当するとは限りません。
承認者
確認された内容について、「この内容で実行してよい」と判断する人です。
確認者が事実関係をチェックしていても、対外的な表現や事業上の判断まで決められるとは限りません。
その場合は、確認と承認を分けます。
小規模な事業では同じ人が両方を担当することも考えられます。重要なのは人数を増やすことではなく、何を確認する役割なのか、何を決定する役割なのかを分けて考えることです。
公開責任者
最後に、その内容を外部へ公開・送信する責任を持つ人です。
Web サイトへの公開、メール送信、顧客への回答など、外部へ出た後に影響する工程では、誰が最終的な公開・送信を担当するかも整理します。
確認者、承認者、公開責任者は、必ず別々の人にするという意味ではありません。
1人で運営している事業であれば、同じ人が3つの役割を持つこともあります。
その場合でも、
「内容を確認する」
「採用するか判断する」
「外部へ出す」
という3つの判断地点を意識しておくと、どこまでAIへ任せるかを整理しやすくなります。
架空例:Webサイトのお知らせ作成を分けてみる
ここでは説明のために、架空の小規模事業者を考えます。実在する顧客やオレインデザインの事例ではありません。
この事業者では、臨時休業のお知らせをWebサイトへ掲載するとします。
業務を次のように分けました。
| 工程 | 担当 | 考え方 |
|---|---|---|
| 休業日などの確定情報を用意する | 人 | 掲載する事実そのものを確定する |
| 確定情報を読みやすく整理する | AIを利用する候補 | 下書きとして作成する |
| 日付・営業時間・対象店舗などを元情報と照合する | 確認者 | AIの下書きをそのまま採用しない |
| 表現や案内内容を最終決定する | 承認者 | 外部へ出す内容を決める |
| Webサイトへ掲載する | 公開責任者 | 公開前に承認済みであることを確認する |
この例では、AIを使っているのは文章を整理する途中の工程だけです。
休業するかどうかをAIに判断させているわけではなく、公開する事実をAIに決めさせてもいません。
また、AIを使うことで確認が複雑になるのであれば、下書きの工程も人が行う方法を選べます。
反対に、社内用の文章などで影響が小さく、元情報との照合が容易な場合には、別の役割分担になるかもしれません。
同じ「文章を作る仕事」でも、どの段階をAIへ任せるかは、用途と責任によって変わります。
影響が大きい業務は、簡単な自動化候補として扱わない
顧客対応、採用、契約、医療、法律、会計などに関係する業務では、判断の結果が人や事業へ大きく影響する場面があります。
この記事では、これらを「AIを使ってはいけない業務」と一律に分類しません。
一方で、単に「文章を作る仕事だから」「分類できそうだから」という理由だけで、そのまま自動化する候補にすることも避けます。
例えば、1つの業務の中でも、
- 情報を整理する
- 検討材料の候補を並べる
- 下書きを作る
ところまでAIを利用し、
- 最終的な判断をする
- 採用・不採用を決める
- 契約内容を確定する
- 専門的な判断を確定する
- 相手へ正式に伝える
といった工程は人が担当する、という分け方も考えられます。
ただし、これもすべての業務に共通するルールではありません。
扱う内容について専門的・法的な確認が必要なのであれば、この記事だけで判断せず、その確認を先に行う必要があります。
重要なのは、影響が大きい業務ほど「AIを使えるか」だけではなく、「誰が判断し、誰が責任を持つのか」まで先に決めることです。
AIを使わない、途中まで使うという選択肢も残す
業務を分解してみると、AIを使わない方が分かりやすい工程も出てきます。
例えば、
- AIへ渡す情報を整理できない
- 正しさを確認する方法を決められない
- 確認に大きな負担がかかる
- 間違った後に戻しにくい
- 誰が最終判断するのか決まっていない
といった状態です。
この場合、無理にAIを使う必要はありません。
また、「AIを使う」と決めた後でも、業務全部を任せる必要はありません。
下書きだけ使う、候補抽出だけ使う、情報整理だけ使う、といった途中までの利用もできます。
AI活用を検討するときの目的は、AIへ任せる範囲を広げることではなく、その業務を無理なく進められる担当範囲を作ることです。
自社の1業務でAIと人の担当を分けてみる
ここまでの内容を、自社でAI利用を検討している業務1つに当てはめてみてください。
まず、業務を次のような工程に分けます。
- 情報を集める
- 整理する
- 候補を出す
- 下書きを作る
- 内容を確認する
- 最終判断する
- 承認する
- 公開・送信・実行する
すべての業務にこの工程があるわけではないので、必要なものだけ使えば構いません。
そのうえで、各工程について次を確認します。
- AIへ任せる候補か
- 間違った場合の影響はどの程度か
- 後からやり直せるか
- 誰が結果について説明するのか
- 扱う情報に機密性はあるか
- 出力の正しさを何と照らし合わせるのか
- 誰が確認するのか
- 誰が最終判断・承認するのか
- 誰が公開・送信・実行するのか
ここまで整理した結果、「この工程にはAIを使わない」という結論になっても問題ありません。
一方で、「整理と下書きまではAIを使えるが、判断と公開は人が担当する」のように境界が見えてくれば、業務全体を丸ごと任せるよりも役割を具体的にできます。
AIに何を任せるかだけでなく、人が何を残すのかまで決める。
生成AIを業務へ取り入れるときは、この2つをセットで整理してみてください。
Webサイト運用でAIと人の役割分担を整理したい方へ
Webサイトのお知らせ作成や更新、問い合わせ対応などで、AIに任せる工程と人が判断する工程を自社だけでは整理しにくい場合は、オレインデザインへご相談ください。
ご相談時には、現在の作業の流れ、困っている工程、扱う情報、内容を確認・承認・公開する担当者を、分かる範囲でお知らせいただけると状況を整理しやすくなります。
AI導入全般を専門に支援するサービスではありません。Webサイト運用に関係するご相談内容を確認したうえで、AIを使わない方法や既存機能の活用も含め、対応できる範囲をご案内します。
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