WordPress で公開している記事を、要約ツールやナレッジツール、自分で構築する検索システムなどから再利用したいと考える機会が増えてきました。
ただ、普段ブラウザーで見ている Web ページには、本文だけでなく、ヘッダーやメニュー、関連記事、装飾用の HTML なども含まれています。人がページを見るうえでは必要な情報ですが、本文を取得して別の用途で使いたいツールにとっては、少し複雑な構造になっている場合があります。
そこで作ったのが、WordPress プラグイン「OD AI Content」です。
OD AI Content は、WordPress の公開コンテンツに、文章構造を把握しやすい Markdown 版を追加します。この記事では、プラグインでできることに加えて、どのような用途に向いているのか、導入前に知っておきたい制約も紹介します。
OD AI Content とは
OD AI Content は、WordPress で公開している投稿や固定ページを、通常の HTML に加えて Markdown でも配信できるようにするプラグインです。
Markdown は、文章の見出しやリスト、リンクなどを、比較的シンプルな記号で表す形式です。たとえば、次のように記述します。
# 記事のタイトル
## 見出し
- 項目1
- 項目2
通常の Web ページに比べてレイアウトや装飾の情報が少ないため、文章の構造を把握しやすいのが特徴です。
OD AI Content を有効にしても、読者が見るページのデザインが Markdown に置き換わるわけではありません。これまでどおりの Web ページを残したまま、同じ記事の「別の表現」として Markdown 版を追加します。
プラグイン名には「AI」と入っていますが、生成 AI で文章を書き換えたり、要約を作ったりする機能はありません。外部の AI サービスや API キーも不要です。WordPress にある公開コンテンツを、外部ツールが取得・解析・再利用しやすい形式へ整えることが役割です。
Google 検索の AI 機能に必要なプラグインではない
ここは、OD AI Content の位置づけとして大切なところです。
Google は、AI による概要や AI モードにコンテンツを表示するために、追加の技術要件や特別な最適化は必要ないと説明しています。AI 向けのテキストファイルや特別な構造化データを用意する必要もなく、従来の SEO の基本が引き続き重要とされています。詳しくは、Google 検索セントラルの「AI 機能とウェブサイト」で確認できます。
そのため、OD AI Content は、Google 検索の AI 機能へ掲載されるための SEO プラグインではありません。導入したからといって、検索順位が上がったり、ChatGPT などの回答に取り上げられたりすることが保証されるわけでもありません。
このプラグインが用意するのは、WordPress の公開コンテンツを Markdown として取得できる、もうひとつの入口です。実際に Markdown 版を利用するかどうかは、それぞれのツールやサービスの実装に左右されます。
OD AI Content でできること
公開記事に Markdown 版の URL を用意できる
プラグインを有効にすると、対象となる投稿や固定ページに Markdown 版の URL が追加されます。
たとえば、通常の記事 URL が次のものだったとします。
https://example.com/blog/example/
この場合、Markdown 版は次の URL で取得できます。
https://example.com/blog/example/index.html.md
これは、llmstxt.org で公開されている提案に沿った URL 形式です。同提案では、ファイル名のない Web ページに対応する Markdown 版として、元の URL に index.html.md を追加する方法が示されています。
Markdown はリクエストされたときに、WordPress に保存されている内容から生成されます。記事を更新するたびに、別の Markdown ファイルを手作業で書き直す必要はありません。
記事の出典を判断するための情報も含められる
生成される Markdown の先頭には、YAML front matter と呼ばれるメタデータ領域が付きます。これは、記事本文とは別に、文書についての情報を一定の形式で記載する部分です。
OD AI Content は、次の情報を出力します。
- 記事タイトル
- 通常のページの URL
- 言語
- 著者
- 公開日時と更新日時
- 投稿タイプ
- カテゴリーやタグなどの分類
- 抜粋がある場合は、その説明文
そのあとに、記事タイトルと本文が続きます。
本文だけでなく、「何という記事なのか」「元のページはどこにあるのか」「いつ公開・更新されたのか」も一緒に渡せるわけです。
通常のページの URL は canonical_url として含めています。ただし、この値をどのように利用するかは取得側の実装次第です。少なくとも、Markdown 版だけを取得したツールや人が、元になった Web ページを確認するための手掛かりになります。
ブロックエディターの内容を Markdown へ変換できる
WordPress のブロックエディターでは、見出し、段落、画像、ボタンなどを「ブロック」として組み合わせて記事を作ります。
OD AI Content は、主に次のようなコアブロックを Markdown に変換します。
- 見出し、段落、リスト、引用
- 表、コード、画像
- 詳細、埋め込み
- ボタン、メディアとテキスト
- グループ、カラム、カバー
たとえば、ボタンは見た目の装飾ではなく、ボタンに書かれた文字とリンク先を残します。YouTube などの埋め込みも、埋め込み先を確認できるリンクとして出力します。
一方、ナビゲーション、ソーシャルリンク、スペーサー、クエリーループは、初期状態では Markdown に含めません。記事本文ではない情報や、ページごとに繰り返されやすい情報を減らすためです。
専用の変換処理がないブロックは、表示用に生成された HTML を Markdown へ変換します。この予備の処理を、この記事では「HTML フォールバック」と呼びます。未対応ブロックの内容を無条件に捨てないための仕組みですが、テーマやプラグイン独自のブロックでは、意図した形にならない可能性があります。
保存済みの記事から Markdown プレビューを生成できる
投稿のブロックエディターにある「OD AI Content」パネルでは、保存済みの記事から Markdown プレビューを生成できます。
プレビューは自動生成されません。記事を保存したあとに「Markdownプレビューを生成」を押すと、その時点の Markdown と変換レポートが表示されます。未保存の変更はプレビューに含まれないため、先に投稿を保存する必要があります。
変換レポートでは、次のブロックも確認できます。
- 意図的に除外されたブロック
- 未検証の HTML フォールバックを使用するブロック
未検証の HTML フォールバックが表示されても、Markdown の生成に失敗したとは限りません。プレビューを読み、必要な文章やリンクが残っているかを確認してください。
プレビュー結果は投稿データとして保存されません。必要なときに生成して確認する仕組みです。公開中で Markdown 出力の対象になっている記事は、投稿一覧の「OD AI Content」列にあるリンクから、実際に配信されている Markdown 版も開けます。
独自ブロックの変換方法を調整できる
ここからは、PHP を使う開発者向けの内容です。通常の投稿や固定ページでコアブロックを使っている場合は、必ず設定しなければならないものではありません。
サイトやプラグイン独自のブロックを使っていて、プレビューで必要な情報が欠けている場合は、変換方法をフィルターや独自ブロックコンバーターで指定できます。
たとえば、「おすすめ情報」をカードとして表示する example/card ブロックがあり、カード内の文章やリンクを Markdown に残したい場合は、次のように調整できます。
add_filter(
'od_ai_content_block_markdown',
static function ( $markdown, $block, $converter ) {
if (
! isset( $block['blockName'] )
|| 'example/card' !== $block['blockName']
) {
return $markdown;
}
$inner_blocks = isset( $block['innerBlocks'] )
&& is_array( $block['innerBlocks'] )
? $block['innerBlocks']
: array();
return "## おすすめ情報\n\n"
. $converter->convert_blocks( $inner_blocks );
},
10,
3
);
フィルター内の PHP に誤りがあると、Markdown を生成できなくなる可能性があります。コードは OD AI Content 本体へ直接書き込まず、サイト専用プラグインなどへ追加し、先にテスト環境でプレビューを確認してください。
独自ブロックの扱いを調整する方法には、次の2つもあります。
- 意図的な除外: そのブロックを Markdown に出力しない
- 検証済み HTML フォールバック: HTML から変換した Markdown を残し、サイト側で確認済みとして扱う
意図的に出力しないブロックは、od_ai_content_excluded_block_names フィルターへ登録します。
add_filter(
'od_ai_content_excluded_block_names',
static function ( $block_names ) {
$block_names[] = 'example/decorative-banner';
return $block_names;
}
);
HTML フォールバックの変換結果に問題がないことを確認できたブロックは、od_ai_content_verified_html_blocks フィルターへ登録できます。
add_filter(
'od_ai_content_verified_html_blocks',
static function ( $block_names ) {
$block_names[] = 'example/profile-card';
return $block_names;
}
);
この登録は Markdown の内容を変更するものではありません。「未検証の HTML フォールバック」として変換レポートへ表示されなくなるだけです。必要な文章やリンクが欠けている場合は、確認済みとして扱うのではなく、専用の変換方法を用意する方がよいでしょう。
テーマやブロックプラグインの更新で HTML が変わる可能性もあります。登録後も、関連するソフトウェアを更新したときには Markdown プレビューをあらためて確認しておくと安心です。詳しい拡張方法は、OD AI Content の READMEで確認できます。
サイト内の重要な記事を llms.txt にまとめられる
OD AI Content は、サイトのルートに次の URL を用意します。
https://example.com/llms.txt
llms.txt は、サイトの概要や参照してほしいページを Markdown 形式で案内するファイルとして提案されています。OD AI Content が生成するファイルには、サイト名と説明に加えて、選択した記事のタイトル、Markdown 版の URL、短い説明が並びます。
robots.txt や XML サイトマップと似て見えるかもしれませんが、役割は異なります。robots.txt はクローラーによるアクセスの扱いを伝えるためのもので、XML サイトマップは検索エンジンへ URL を知らせるために使われます。llms.txt は、それらを置き換えるものではありません。
また、llms.txt は提案段階の仕組みです。主要な AI サービスが共通して利用する正式な Web 標準ではなく、公開したファイルが参照されるかどうかは、それぞれのツールやサービスの実装に左右されます。
OD AI Content では、次の2つの運用方法を選べます。
- 対象の投稿タイプにある公開コンテンツを、既定で
llms.txtに含める - 全体の既定値は無効のまま、投稿ごとに掲載対象を選ぶ
初期状態では、個別設定のない記事を llms.txt に含めません。
個人的には、最初からすべての記事を並べるよりも、プロフィール、サービス案内、代表的な記事など、サイトを理解するうえで大切なページから選ぶ方法が扱いやすいと考えています。
各記事には、最大280文字の短い説明も設定できます。未入力の場合は、記事の抜粋、本文の先頭部分の順に使われます。
公開したくない内容は除外できる
設定画面では、Markdown 出力を有効にする投稿タイプを選べます。初期状態の対象は、投稿と固定ページです。
さらに、ブロックエディターの「OD AI Content」パネルから、記事ごとに「このコンテンツをMarkdown出力から除外」を設定できます。
除外した記事では、Markdown 版の URL にアクセスしても内容は表示されず、llms.txt の掲載候補にもなりません。
また、次のコンテンツは Markdown 出力の対象外です。
- 下書き
- 非公開の記事
- パスワードで保護された記事
- 設定で対象にしていない投稿タイプ
このプラグインは、WordPress ですでに公開している情報を別の形式でも提供するためのものです。非公開情報を外部の AI サービスへ送信する仕組みではありません。
Markdown 版があることを機械的に示せる
対象となる通常の HTML ページには、同じ記事の Markdown 版があることを示す alternate 情報を追加します。
これは、ページを取得した対応ツールに対して、別形式の URL を示すための情報です。ブラウザー上の見た目には影響しません。ただし、alternate があるからといって、すべてのクローラーや AI サービスが Markdown 版を自動的に利用するわけではありません。
Markdown 版の HTTP レスポンスには、元記事を示す canonical の Link ヘッダーと、検索結果へ別ページとして掲載させないための X-Robots-Tag: noindex も付けています。通常の Web ページを本来のページとして扱いながら、必要なツールへ別形式を提供する設計です。
インストールと最初の設定
本記事は、2026年8月10日時点のバージョン0.6.1をもとにしています。対応環境は WordPress 6.9 以降、PHP 7.4 以降です。最新の配布ファイルは、GitHub のリリースページで確認してください。
現時点では、WordPress.org のプラグインディレクトリから検索してインストールする形式ではありません。GitHub のリリースページに添付されている配布用の od-ai-content.zip を使用します。
WordPress 管理画面からの流れは次のとおりです。
- GitHub のリリースページから
od-ai-content.zipをダウンロードする - WordPress 管理画面の「プラグイン → プラグインを追加」を開く
- 「プラグインのアップロード」を押す
- ZIP ファイルを選び、インストールして有効化する
- 「設定 → OD AI Content」を開く
- 「Markdown代替表現を有効化」と、対象にする投稿タイプを確認する
ZIP ファイルを管理画面からアップロードする方法は、WordPress.org の「プラグインの管理」でも案内されています。
llms.txt を運用する場合は、続けて次のどちらかを選びます。
- 「個別設定のないコンテンツをllms.txtに含める」を有効にし、必要のない記事を個別に外す
- 全体の既定値は無効のままにし、掲載したい記事だけを個別に選ぶ
設定後は対象となる投稿を保存し、ブロックエディターの「OD AI Content」パネルから「Markdownプレビューを生成」を押します。本文やリンク、変換レポートに問題がないことを確認してください。
公開記事の URL の末尾に index.html.md を追加するか、投稿一覧の「OD AI Content」列から、実際に配信されている Markdown 版を開けます。llms.txt を使う場合は、サイトの /llms.txt も開き、意図した記事と説明文が掲載されているか確認しておきましょう。
GitHub で新しいリリースが公開された場合は、WordPress 標準のプラグイン更新画面に更新通知を表示できる仕組みも備えています。
どのようなサイトに向いているのか
OD AI Content は、次のようなサイトで検討しやすいと思います。
- ブログやオウンドメディアに記事が蓄積されている
- サービス内容や活動内容を文章で詳しく発信している
- 製品マニュアルや技術資料を WordPress で公開している
- 公開情報を、自分で構築する検索・要約・ナレッジシステムから利用したい
- Markdown の URL を指定して取得できる外部ツールを使っている
llms.txtや Markdown での情報配信を小さく試してみたい
とくに価値がわかりやすいのは、Markdown 版を取得するツールや処理が具体的に決まっている場合です。「将来どこかの AI が使うかもしれない」という期待だけでは、導入後の効果を判断しにくくなります。
反対に、会員限定サイトなど、非公開情報が中心のサイトには用途があまりありません。また、EC サイトの商品価格や在庫、複雑なカスタムフィールドの情報を専用形式で出力する機能は、現時点では備えていません。
テーマや独自ブロックによる表現を細かく残したい場合も、追加の調整が必要になる可能性があります。
導入前に知っておきたいこと
llms.txt 固有の効果は確認されていない
llms.txt がクローラーに取得された、Google にインデックスされた、AI がファイル内の情報を回答に使った、といった事例はあります。しかし、それだけでは llms.txt という名前や形式が特別に評価されたことの証明にはなりません。
Mark Williams-Cook 氏が行った cats.txt の実験では、架空の規格として公開した cats.txt でも、クローラーによる取得、Google へのインデックス、AI による情報の参照、ChatGPT による肯定的な説明が再現されました。
この実験が「llms.txt は将来も役に立たない」と証明したわけではありません。一方で、公開されたテキストファイルとして通常どおり取得・参照された現象を、llms.txt 固有の効果として扱うべきではないことは示しています。
OD AI Content でも、llms.txt を AI 検索への掲載を増やす機能としては扱っていません。対応ツールへサイトの概要と Markdown 版の URL を渡すための、試験的な案内ファイルと考えるのがよいでしょう。
通常の SEO とコンテンツ運用は引き続き必要
Google 検索の AI 機能では、通常のページがインデックス登録などの既存要件を満たすことが前提です。検索での見つけやすさを改善したい場合は、まずコンテンツの品質、クロール、内部リンク、ページ体験など、従来の SEO の基本を確認する必要があります。
OD AI Content が行うのは、公開情報を Markdown として取得・再利用できる入口を追加するところまでです。記事そのものの正確さや更新、サイトの信頼性、クローラーに対するアクセス方針は、引き続きサイト運営側で考える必要があります。
また、llms.txt はクローラーのアクセスを許可・拒否するためのファイルではありません。クローラーごとの扱いを決めたい場合は、各サービスの仕様を確認したうえで、robots.txt などを別途検討してください。
まずは少数の記事で試す
Markdown はアクセスされたときに動的に生成されます。また、テーマやプラグイン独自のブロックは、HTML フォールバックによって元の表示と異なる形へ変換される場合があります。
そのため、最初からすべての記事を対象にするよりも、テスト環境や小さな範囲から始める方が確認しやすいと思います。代表的な記事をいくつか選び、Markdown プレビュー、公開中の Markdown、llms.txt の内容を確認してから対象を広げるとよいでしょう。
まとめ
OD AI Content は、WordPress で公開している記事に、外部ツールから取得・再利用できる Markdown 版を追加するプラグインです。
主な役割をまとめると、次の4つになります。
- 公開記事を Markdown でも取得できるようにする
- Markdown 版に、元記事や公開日などの情報を添える
- 必要なときに Markdown プレビューとブロックの変換レポートを確認できるようにする
- 選択した記事を
llms.txtで案内できるようにする
人に読んでもらうための通常の Web ページはそのまま残し、その横に Markdown で取得できる入口を用意する。個人的には、そのくらいの距離感で公開コンテンツの再利用を試せるのが、このプラグインのよいところだと考えています。
一方で、設置しただけで AI 検索や検索順位に効果が出るものではありません。どのツールへ、どのコンテンツを、何のために渡したいのかを決めたうえで使うことが大切です。
まずは数記事の Markdown 版を確認するところから試してみてください。WordPress に蓄積したコンテンツを、これからどのように届け、再利用していくか考える際の参考になれば嬉しいです。













