以前、制作会社やフリーランスに作ってもらったホームページについて、修正をお願いしようとしても返信が来ない。担当者が退職したらしく、後任も分からない。
サイトは今も表示されているものの、WordPress の管理画面には更新通知が出ている。毎年何かの費用を支払っているけれど、それがサーバー代なのか、ドメイン代なのか、保守費用なのかもよく分からない。
このような状況になると、「今すぐ別の制作会社を探して、更新してもらった方が良いのでは」と焦ってしまうかもしれません。
ただ、僕がこの状況で最初に大切だと考えているのは、WordPress を触ることではなく、サイトを維持するための契約と管理状況を整理することです。
すべての情報が見つからなくても問題ありません。分かる範囲を整理できれば、別の制作会社や WordPress に詳しい専門家へ、現状調査を依頼しやすくなります。
この記事では、サイトは現在も表示されているものの、管理を任せていた相手と連絡が取れず、このままで良いのか不安を感じている方に向けて、最初に確認したいことを整理します。
制作会社だけでなく、個人に依頼した場合も起こりうる
この記事では主に「制作会社」という言葉を使っていますが、法人の制作会社に依頼した場合だけを想定しているわけではありません。
知人や紹介、マッチングやクラウドソーシングサービスなどを通じて、副業でホームページ制作をしていた個人に依頼したケースもあります。制作当時は継続して相談できていたものの、その後に本業や生活の状況が変わり、現在は制作の仕事をしていない。連絡先も変わり、返信が来なくなってしまった、ということも起こり得ます。
個人や副業の制作者へ依頼すること自体が、問題なのではありません。法人の制作会社でも、廃業、担当者の退職、事業内容の変更などによって、連絡や引き継ぎが難しくなることはあります。
問題になりやすいのは、依頼先の事業形態ではなく、ドメインやサーバーの契約、WordPress の管理者権限、制作データなどを、依頼者側で確認できない状態です。
個人的には、ホームページ制作の依頼先が多様になるほど、このような引き継ぎの問題は今後も起こり得ると考えています。個人に依頼した場合も、この記事で紹介する確認の順番は基本的に同じです。
サイトが表示されているなら、まずは慌てて変更しない
制作会社や個人の制作者と連絡が取れなくなったからといって、すぐにサイトが消えるとは限りません。
一方で、表示されているから何もしなくて良い、とも言い切れません。見えないところで、ドメインやサーバーの更新期限が近づいていたり、WordPress の更新が止まっていたり、バックアップが正常に取れていなかったりする可能性があるためです。
この段階では、次のような操作を急がないようにしましょう。
- WordPress 本体、プラグイン、テーマをまとめて更新する
- PHP のバージョンを変更する
- 制作会社や制作者のユーザーアカウントを削除する
- サーバーを解約する
- ドメインを移管する
- DNS の設定を変更する
- 内容を確認せず、保守費用の支払いを止める
WordPress の公式ドキュメントでも、更新前にサイトをバックアップすることが案内されています。長期間管理状況が分からなかったサイトでは、古いテーマやプラグイン、独自の改修などが組み合わさっている場合があります。更新通知が出ていても、まずは現在の状態を調べ、問題が起きたときに戻せることを確認してから作業する方が安全です。
なお、次のような症状がある場合は、この記事の確認作業よりも先に専門家へ相談してください。
- サイトが表示されない
- 覚えのないサイトへ転送される
- ウイルス感染や危険なサイトであるという警告が出る
- 会社のメールが使えない
- ドメインやサーバーの期限切れを知らせる通知が届いている
- 個人情報の漏えいが疑われる
これらは「今後の引き継ぎを考える段階」ではなく、事業への影響を確認しながら対応する必要がある状態です。
最初に行いたい3つの確認
最初から専門用語の多い管理画面を調べる必要はありません。まずは、社内や手元に残っている情報を探すところから始めます。
1. 請求書と支払い履歴を探す
最初に、ホームページに関係しそうな請求書や支払い履歴を探します。
- 制作会社や制作者から届いた請求書
- 毎月または毎年支払っている費用
- クレジットカードの利用明細
- 銀行口座の振込履歴
- サーバー利用料
- ドメイン更新料
- 保守管理費
- メール、バックアップ、セキュリティサービスなどの利用料
この時点で、契約内容をすべて判断する必要はありません。まずは、誰に、いくら、どのくらいの間隔で支払っているかを記録します。次の請求日や更新日が分かる場合は、あわせて控えておきましょう。
Web 担当者が分からなくても、経理担当者が請求書や振込履歴を持っていることがあります。当時の社内担当者が退職している場合も、経理資料が契約先を見つける手掛かりになるかもしれません。
2. 過去のメールを検索する
次に、ホームページを制作した時期のメールや、毎年届いている更新案内を探します。
たとえば、次の言葉で検索してみてください。
ホームページ
WordPress
ドメイン
サーバー
レンタルサーバー
ログイン
アカウント
契約
更新
有効期限
保守
納品
仕様書
デザイン
素材
請求書からサービス名が分かった場合は、その会社名やサービス名でも検索します。
見つけたいのは、ログイン情報だけではありません。契約者、登録メールアドレス、更新日、制作物の納品範囲、保守内容などが分かるメールも、引き継ぎに役立ちます。
見つけたメールや添付ファイルは、削除せずに保存しておきましょう。ただし、パスワードが書かれたメールを、そのまま複数人へ転送するのは避けたいところです。相談先が決まってから、安全な共有方法を確認してください。
3. WordPress にログインできるか確認する
WordPress のログイン情報を持っている場合は、管理画面へ入れるか確認します。分からないパスワードを何度も推測して入力するのではなく、手元に残っている情報で確認できる範囲に留めましょう。
ここで行うのは、基本的に「ログインできるか」「何が表示されているか」を見るところまでです。
- 自分または自社のユーザー名でログインできるか
- 「ユーザー」画面を開ける場合、自分または自社のユーザーが「管理者」になっているか
- WordPress 本体、プラグイン、テーマの更新通知が何件あるか
- 管理画面にエラーや警告が表示されていないか
- 「ツール → サイトヘルス」を表示できるか
WordPress には、管理者、編集者、投稿者など、できることが異なる権限があります。公式ドキュメントでも、単一サイトの管理者は、プラグイン、テーマ、ユーザーなどを含む管理機能へアクセスできる役割として説明されています (Roles and Capabilities)。
記事を編集できるからといって、引き継ぎに必要な管理者権限を持っているとは限りません。「ユーザー」画面そのものを表示できない場合も、その状況を記録して相談先へ伝えれば大丈夫です。
更新通知が表示されていても、この段階では「今すぐ更新」を押さないでください。 画面をスクリーンショットで残し、相談時に見せられるようにしておくと状況を伝えやすくなります。
ドメイン、サーバー、WordPress は別々に確認する
ホームページを管理するときに分かりにくいのが、ドメイン、サーバー、WordPress の違いです。
大まかに分けると、次のように考えられます。
| 項目 | 役割 | 最初に確認したいこと |
|---|---|---|
| ドメイン | ホームページやメールで使う住所 | 契約先、契約者、更新期限、支払者、登録メールアドレス |
| レンタルサーバー | ホームページのデータを置く場所 | 契約先、契約者、管理画面へのログイン、更新期限、支払者 |
| WordPress | ホームページの内容を管理する仕組み | 管理画面へのログイン、管理者権限、登録メールアドレス、更新状況 |
この3つは、同じ会社がまとめて管理していることもあれば、それぞれ別の会社と契約していることもあります。
特に優先して確認したいのがドメインです。ドメインはホームページだけでなく、info@example.com のような会社のメールにも使われることがあります。状況を確認せずにドメインや DNS を変更すると、サイトだけでなくメールにも影響が出る可能性があります。
ICANN は、ドメインの登録者がレジストラ (登録事業者) と契約し、レジストラを通じてドメインの設定を管理すると説明しています (Information for Domain Name Registrants)。そのため、単にサイトで会社名を使っているかではなく、誰が登録者になっていて、誰が管理画面や登録メールを扱えるのかを確認する必要があります。管理サービスによって画面上の項目名は異なるため、「契約者」「登録者」「会員情報」などの表示を確認してください。
次のような状態が分かった場合は、自分だけで名義変更や移管を進めず、契約先のサポートや専門家へ相談した方が良いでしょう。
- ドメインやサーバーが制作会社や制作者の名義になっている
- 登録メールアドレスが制作会社や制作者のものになっている
- 管理画面へログインできない
- 契約更新日が近い
- ホームページと同じドメインで会社のメールも使っている
- どの会社と契約しているのか分からない
制作会社や制作者以外の連絡先も探してみる
制作会社の代表メールアドレスや、個人の制作者に使っていた連絡先から返信がなくても、別のところに手掛かりが残っている場合があります。
- 当時の営業担当者や制作担当者
- 制作時にやり取りしていたデザイナーやエンジニア
- 自社で以前ホームページを担当していた人
- 契約や支払いを管理している経理担当者
- レンタルサーバー会社やドメイン管理会社のサポート窓口
- 制作会社から紹介された別の事業者
個人の連絡先を知っている場合も、いきなりログイン情報を求めるのではなく、まず現在の窓口や引き継ぎ先を確認すると良いでしょう。
また、サーバー会社やドメイン管理会社へ問い合わせても、本人確認や契約者確認ができなければ、契約情報を開示してもらえない場合があります。契約書、請求書、法人情報など、契約との関係を示せる資料を用意して相談します。
保守を依頼していた場合は、支払いの内訳も確認する
制作会社や個人の制作者に毎月または毎年、保守費用を支払っていた場合も、連絡が取れないという理由だけで、内容を確認せずに支払いを止めるのは避けた方が良い場合があります。
支払いの中に、次のような費用が含まれている可能性があるためです。
- レンタルサーバー料金
- ドメイン更新料
- メール利用料
- 有料テーマやプラグインの利用料
- バックアップサービス
- セキュリティサービス
契約書、見積書、請求書、過去のメールを確認し、何に対する支払いなのかを整理します。これは支払いを無条件に続けるという意味ではありません。停止した場合にサイトやメールへ影響する費用が含まれていないかを確認したうえで、継続または停止を判断するためです。
可能であれば、月次報告書、更新作業の報告メール、バックアップ完了通知なども探してみてください。ただし、報告書が見つからないからといって、保守作業が行われていなかったと断定はできません。契約内容と現在のサイトの状態を分けて確認する必要があります。
契約解除や支払いの継続について判断が難しい場合は、社内の経理担当者に加え、必要に応じて法律の専門家にも確認してください。
自分で確認してよいことと、触らない方がよいこと
この段階で自分で行いやすいのは、探す、見る、記録する作業です。
自分で確認してよいこと
- 契約書、見積書、請求書を探す
- 過去のメールや添付ファイルを検索する
- 制作会社や制作者へ連絡した日と連絡方法を記録する
- サイトや会社のメールが現在使えるか確認する
- WordPress へログインできるか確認する
- 更新通知やエラー画面をスクリーンショットで残す
- サーバー会社やドメイン管理会社の名前を確認する
- 今後修正したい内容や、困っていることを書き出す
状況が分かるまで触らない方がよいこと
- WordPress 本体、プラグイン、テーマを更新する
- PHP のバージョンを変更する
- 不明なユーザーや以前の制作者のユーザーを削除する
- サーバー、ドメイン、保守サービスを解約する
- ドメイン移管や DNS 変更を行う
- 別のサーバーへ移転する
- 不要に見えるファイルやプラグインを削除する
以前の制作会社や制作者のユーザーが残っていると、すぐ削除したくなるかもしれません。しかし、そのユーザーが投稿や固定ページの作成者になっている場合があります。まずはバックアップと影響範囲を確認し、その後でパスワードの変更、権限の縮小、アカウントの停止や削除を検討します。
WordPress の一般的なサイトを復元するには、データベースとファイルの両方が必要です (Backups — Advanced Administration Handbook)。
管理画面にある「ツール → エクスポート」では、投稿、固定ページ、コメント、カスタムフィールドなどを含む WXR 形式のファイルを保存できます (Tools Export screen)。ただし、テーマやプラグイン、アップロード済みファイル、サーバー設定を含む完全なバックアップの代わりにはなりません。
現状調査を依頼するときは、バックアップの有無だけでなく、ファイルとデータベースの両方が取得できるか、どの時点へ戻せるかも確認してもらうと良いでしょう。
別の制作会社や専門家へ相談した方がよい状態
次のいずれかに当てはまる場合は、自分で設定を変更する前に、別の制作会社や WordPress に詳しい専門家へ相談することをおすすめします。
- ドメインやサーバーの契約先が分からない
- 契約先は分かるが、管理画面へログインできない
- 契約者や登録メールアドレスが制作会社や制作者のものになっている
- WordPress の管理者権限を持っていない
- 更新通知が大量に残っている
- 何年も WordPress を更新していない
- バックアップの有無や復元方法が分からない
- 独自に作られたテーマや機能がある
- 有料テーマや有料プラグインを使っている
- 問い合わせフォームが届いているか分からない
- サイトと同じドメインで会社のメールを使っている
- 制作会社や制作者への支払いを止めて良いか判断できない
このとき、最初から「すべて更新してください」と依頼するよりも、次のように伝えると状況を共有しやすくなります。
制作会社や個人の制作者と連絡が取れず、サイトの管理状況が分かりません。更新作業を始める前に、ドメイン、サーバー、WordPress の管理権限と、バックアップの状況を調べてほしいです。
まず現状を調査し、その結果を見てから、権限の整理、更新、修復、サーバー移転、作り直しなどの選択肢を検討します。WordPress を使い続けることや、全面的に作り直すことを、調査前から決める必要はありません。
相談する前に用意しておくと良い情報
すべてそろっていなくても構いません。分かる項目だけ、次のように整理しておくと相談が進みやすくなります。
- ホームページの URL
- 制作してもらった時期
- 制作会社、個人の制作者、または当時の担当者の名前
- 最後に連絡が取れた時期
- 連絡を試した方法と日時
- 現在、サイトと会社のメールが使えるか
- WordPress へログインできるか
- ドメインとサーバーの契約先が分かるか
- 毎月または毎年支払っている費用
- 契約書、見積書、請求書が残っているか
- 仕様書、操作マニュアル、デザイン、写真、原稿などの制作データが残っているか
- バックアップや作業報告の記録があるか
- 更新通知やエラー画面のスクリーンショット
- 問い合わせ、予約、購入など、止めたくない機能
- 現在修正したい内容
パスワードやクレジットカード情報は、最初の問い合わせフォームや通常のメール本文へ書かないようにしましょう。依頼先と共有方法を決めてから、必要な情報だけを渡します。
今後は、自社でも契約と管理状況を確認できる形にする
制作会社や個人の制作者にドメインやサーバーの管理を任せること自体が、問題なのではありません。専門的な管理を外部へ依頼することで、社内の負担を減らせる場合もあります。
避けたいのは、依頼先だけが契約内容やログイン情報を知っていて、サイト所有者側では何も確認できない状態です。
引き継ぎが終わったら、少なくとも次の情報を自社でも確認できるようにしておきましょう。
- ドメインとサーバーの契約先、契約者、更新日
- WordPress の代表となる管理者
- 登録メールアドレスと通知先
- 費用の支払者と支払い方法
- 保守の範囲と緊急時の連絡先
- バックアップの保存先と復元を依頼する相手
- Google Analytics など外部サービスの管理者
- 契約書、アカウント一覧、引き継ぎ資料の保管場所
Web に詳しくなければ、ドメイン、サーバー、WordPress の違いが分からないのは不自然なことではありません。制作時に「すべて任せてください」と説明され、そのままお願いしているケースもあるでしょう。
大切なのは、分からなかったことを責めることではなく、今ある資料からひとつずつ整理していくことです。
制作会社や個人の制作者と連絡が取れなくなったときは、慌てて更新や移転を始めず、まず請求書を探し、過去のメールを確認し、WordPress にログインできるか試してみてください。見つからない情報があっても、分かる範囲をまとめれば、現状調査から相談できます。
オレインデザインでは、他社が制作した WordPress サイトについても、管理状況の確認、引き継ぎに必要な情報の整理、更新や今後の運用方法の検討をお手伝いしています。
「何を頼めば良いのか分からない」という段階でも、まずは現在の状態を整理するところからご相談ください。この記事が、安全に次の管理体制へ移るための参考になれば嬉しいです。













